WRAPとは
WRAP(Wellness Recovery Action Plan)とは日本語で元気回復行動プランといい、元気に役立つ自らの取扱説明書(セルフヘルプツール)を作成していくといったものです。
WRAPはアメリカの精神障害の当事者であるメアリー・エレン・コープランド氏を中心に作成され、世界中で活用されています。
元気のために必要な5つの要素と、6つの行動プランからなります。
元気のために必要な5つの要素
希望
可能性を感じること、可能性が開かれていると思えることです。
主体(責任)
自らの選択で行動することです。
同時に責任を伴います。
学び
選択するために、選択肢を学ぶことです。
権利擁護
必要としていることを勇気を持って声に出し、冷静に伝え、相手と対話を始めることです。
サポート
お互いがお互いの力となるような関係性を育むことです。
以上は「 リカバリー・キーコンセプト」と呼ばれます。
WRAPの実践
元気に役立つ道具箱
元気であるために、あるいは元気になるためにやっていること、してみたいことのリストを作成します。
日常生活管理プラン
いいかんじの自分を定義し、いいかんじでいるために毎日やるといいこと、ときどきするといいことのリストを作成します。
引き金とプラン
引き金とは、外側からの刺激で調子をくずすことです。
どういうときか考え、行動リストを作成します。
注意サインとプラン
注意サインとは内側から起こる乱れです。
わずかな乱れなので、周囲が気づくことも多い事です。
どういうときか考え、すべきことのリストを作成します。
調子が悪くなってきたときとそのプラン
深刻な調子の乱れと、そのときしなければならない行動リストを作成します。
クライシスプラン
自分で行動できないような緊急時に、他の人にゆだねるべき行動の指示リストを作成します。
クライシス後のプラン
クライシスを脱出したあとは急に以前の生活に戻さずに、調子をくずさないための行動リストを作成します。
WRAPクラス
WRAPクラスにおいては、参加者は病気の有無、地位や立場、性差、年齢など関係なく皆平等です。
クラス内で呼ばれたい名前を決め、チェックインします。
次に居心地のいい場にするための「安心のための合意」をみんなで作ります。
ファシリテーター(進行役)のテーマの説明に続いて各自テーマについて考え、手を挙げて発表します。
発表したくない人はしなくてかまいません。
最後にフィードバックを行い、チェックアウトします。
他の人の意見を聞くことで、WRAPをつくるための沢山の気づきが得られます。
WRAPファシリテーター
ファシリテーターとは、簡単に進行役のことです。
WRAPクラスは誰でも開くことは出来ません。
5日間のファシリテーター養成研修を受講し、ファシリテーターとなった人だけがクラスを開催することが出来ます。
WRAPアドバンスレベルファシリテーター
WRAPファシリテーターを指導する立場のファシリテーターです。
アドバンスレベルの研修を修了する必要があります。
増川ねてる氏
WRAPで一番有名な人と言えば、WRAPアドバンスレベルファシリテーターで当事者でもある「増川ねてる」氏だと思います。
彼の場を創る才能、話の技術は素晴らしいです。
私の尊敬する人の一人です。
私のファシリテーター養成研修のときの、アドバンスレベルファシリテーターでした。
現在フリーランスのWRAPアドバンスレベルファシリテーターとして、全国を飛び回っています。
書籍も出しています。
WRAPを始める!―精神科看護師とのWRAP入門【リカバリーのキーコンセプトと元気に役立つ道具箱編】
- 作者: 増川ねてる,藤田茂治
- 出版社/メーカー: 精神看護出版
- 発売日: 2016/07/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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WRAPを始める!―精神科看護師とのWRAP入門【WRAP(元気回復行動プラン)編】
- 作者: 増川ねてる,藤田茂治
- 出版社/メーカー: 精神看護出版
- 発売日: 2018/06/25
- メディア: 単行本
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2019/4/25、私の地元でねてる氏の講演がありました。
急遽私と仲間も聴衆の前に座り、ときどき話を振られました。
緊張しましたが、とても良い経験となりました。
WRAPは自分のためのもの
WRAPをつくるのは他の人のためでない、あなた自身のためです。
自分のためだから、どのようなことでもかまいません。
WRAPは常に更新していけます。
自分だけのWRAPをつくって、元気な生活を送っていきましょう。